新年のご挨拶

あっという間に3が日も過ぎ、もう寒の入りだそうです。年賀状をいただいた方には厚く御礼申し上げます。「選挙の結果に茫然」「怒っている」などと書き添えられる方もおられ、共感いたしました。年明けから「村山談話見直し」とか「原発再稼働容認」とか、けしからぬ話題ばかりですが、その政権政党を選んだのは「国民」ですから、自分たちの思いがいかに届かなかったかを痛感する新年でした。
では、どうすればいいのか?これでも「物書き」のはしくれゆえ、社会的発言をするほかないと思うのですが、それもごく小さな部分にしか伝えられない。「身内的共感」に甘んじたくないと思いますが、その範囲でさえわたしがなぜ「らいてう」をずっと追いかけているかということは「ごくろうさん」といわれるけれど、本当のところは伝わっていないのではないか?と忸怩たる思いです。
でも、今年の年賀状に「一度らいてうの家に行きたい」と書いてくださった方が大勢おられました。遠いし、不便だし、お金がかかるから、簡単に来てくださいとはいえない。でも、今年は一度日時を決めてみなさんをお招きしたいと思っています。「らいてう学」といえばおおげさですが、「3.11」以後、そして2012年の政治状況を改めて考え直しながら、なぜわたしが「らいてう」にこだわってきたかを聞いていただき、みんなで話し合う機会を持ちたいと思っています。
NHKの1月27日の放送を見ていただきたいと思いますが、なにせわたしはちょっぴり出演ですから、どう組み立てられるかはNHKと案内人の田中優子さんとスタジオトークの上野千鶴子さんに任せられているわけです。資料は提供しましたが、その取捨もわたしがかかわるわけではありません。言い訳ではなく、それでもらいてうをとりあげる意味はあると思い、協力しました。むしろ、これを機会に「らいてう学」を提唱したいと思うので。
それは何を指すのか?と聞かれそうですが、いまわたしが考えているのは、近代日本の「民主主義の歴史」をもう一度組み立てなおしてみたいということです。大まかにいうと、近代以降の日本は明治維新に対する自由民権運動、「大日本帝国」に対する大正デモクラシー運動、そして戦後「日本国憲法体制における戦後民主主義運動」という流れを持っていると思いますが、それらの流れを理解するうえで、わたしが1950年代から60年代にかけて学んだ歴史学は、「人民の進歩と革新の伝統」の継承については教えてくれましたが、もっと多様な人々の生活や思想について、ややもすると「小ブルジョア的」「妥協的」という理由で過小評価してきたのではないか、という感想を抱いています。特にジェンダーの視点はほとんど無視されてきたのではないか。平塚らいてうは、その「典型」ともいうべき存在であったような気がします。彼女は「革命的思想」の持ち主でもなかったし、1930年代には当時のソ連を「強権社会」と批判、無政府の「協同自治社会」を夢見ます。戦時下の言説もまたまことに危うい要素を含みつつ、1942年の「疎開」という選択の意味も問われるわけです。戦後はまた「世界連邦」思想に共鳴しますが、これがまたアメリカ資本主義もソ連社会主義も世界平和構築に役に立たないという主張であったため、「反共主義」と非難されます。冷戦時代に核実験の停止を求めて国連はもとよりアメリカ、ソ連を含む核保有国に核実験即時停止を要求したのも、戦後日本の平和運動の流れの中で批判的にみられる原因だったのではないかと思われます。
その彼女が、なぜ1950年単独講和に反対し「すべての軍事基地と軍隊の駐留に反対」して日米安保条約に反対したのか。それ以後、彼女自身のことばによれば「大衆的婦人運動」に歩み入り、戦時中無権利で戦争を阻止できなかったことを「愧じ」つつ平和運動に熱中していくのか、その外見だけでなく彼女自身の内部の精神的葛藤と「自分で思うことだけをかならず実行する」という行動力は(実際生活では足早に歩くことさえしなかった晩年に)どこから生まれたか。これらの問いは「彼女が革新的になった」というだけですまされてこなかったか。
というわけで、歴史学界の隅に身を置いてきたものとして、それらを見直したいという欲求があって「らいてう」にこだわっているのです。NHKがその思いをいくらかでもオンエアしてくれれば、と思うのですがそれは基本的にはわたし自身が世に問うほかないと思います。『満月の夜の森で』はその試行の一端でした。試行は錯誤をともないますゆえ、まだ書くべきことはあるように思います。いつまでできるのか。残された時間はもう少ししかないとあせりつつ、新年を迎えました。昔流にいえば「数え」の80歳ですからね。神様、どうかわたしにその時間と思考能力を残したまえ、と初詣もせずに祈った次第でありました。今年もどうぞよろしく。

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