瀬戸内寂聴さま―らいてうの家から

 朝日新聞2014年1月11日付夕刊の「瀬戸内寂聴さんに聞く」を拝読いたしました。「秘密法反対、命捧げる」という見出しで、「自らの戦争体験から(秘密保護法の)危険性を訴え、廃止を求めている」とリード記事があり、「私は、残りわずかな命を秘密法反対にささげます」と語っておられます。「日本人はあまり自分の意見を言いません。でも、もっと一人ひとりが、生きるためにこうしてほしいと心の欲求を口に出すべきです」ともあります。まことに我が意を得たご意見でした。

 瀬戸内さんがイラク戦争に反対され、さらに福島第一原発事故以後「原発ゼロ」を求めて反対運動に立ち上がられたことはよく知っています。2012年7月、わたしは代々木公園の「さようなら原発10万人集会」で「もう満員です。入れません」という制止をかいくぐって会場の隅にもぐりこみ、それでもお顔は見えませんでしたがお話だけは聞きました。今また「卒寿」を越えて「秘密法廃止に命をかける」と発言されることに、深く敬意を表します。
わたしはあなたより一回り下で、「子どものとき戦争に出会った」世代です。あのとき何も知らず、「勝ち抜く僕ら少国民/天皇陛下のおんために/死ねと教えた父母の」という歌を歌い、15歳の兄が少年兵になって軍隊に行くとき手を振って見送った少女の記憶をわすれません。「知らないことは罪」です。「依らしむべし、知らしむべからず」の政治を許してはならない、と痛感しています。

 わたしは信州で「らいてうの家」を運営しているNPO平塚らいてうの会の一員です。前身の「平塚らいてうを記念する会」時代には、平塚らいてうの記録映画製作にご助力いただき、また茅ケ崎にらいてうの記念碑を建設するときもお力添えをいただきました。羽田澄子監督の『元始、女性は太陽であった』の試写会をごらんになった瀬戸内さんが、『サンデー毎日』2002年1月31日号に書かれた「かきおき草子」のコピーを、わたしは今も大切に持っています。
瀬戸内さんは試写をみながら「途中で私は恥かしいほど涙があふれて困ってしまった。私は実に大きな誤りをしていた。これまで私はらいてうの真骨頂は、青春時代、「青鞜」から身を引くまでで、(奥村博史と結婚以後は)本来のオーラがなくなったと思い、戦後の平和運動は、らいてう以外の人も出来ると思っていた。…けれども羽田さんの、何のてらいもない、あるがままのらいてうのドキュメント映画を見せてもらい、後半生に至って涙がこみあげてきたのだった。らいてうの平和運動に至るまでの、長い人生の正直一途、純粋無垢な生き方こそ、ウーマンリブの元祖となるべきエネルギーの根源であり、そのパワーが結実しての必然的な平和運動なのだと、肝に銘じて初めて納得した」と書かれました。

 わたしはこの文章に共感し、以来らいてうの平和思想を戦後にわかに出てきたものではなく、若い日の「青春の彷徨」から「元始女性は太陽であった」の宇宙観、恋愛と結婚、出産に至る過程での「他愛主義」の発見、いのちを産む女性の手で世界平和構築をという発想に立つ新婦人協会運動、そして戦中の動揺と錯誤を経て戦後日本国憲法と出会い、「戦争だけが敵」という平和構想に至る全過程のなかでとらえる必要があると考えるようになりました。2006年にオープンしたらいてうの家には、そういう思いを込めて「平和・協同・自然のひろば」と名づけました。

わたしは一度でいいから瀬戸内さんをらいてうの家にお招きしたいと思い続けてきました。何回かお手紙もさし上げたことがあります。長野市に講演に見えるご予定の時は予約して待っていましたがそのときは体調を崩され、中止になりました。交通不便でクマも出るという山中にお招きすることが“無謀”であることはわかっています。でも、あの森の一角で瀬戸内さんに“青空説法”をしていただいたら、きっと森のウグイスやカッコウたちも歌をやめて聞き入り、シラカバやカラマツの木々のそよぎも一瞬静まるのではないか、テーマはもちろん「戦争反対」で…。今は冬期休館中ですが、やがて来る春を前に今もお待ちしています。

 ともあれ、これからも瀬戸内さんのご健康とご活躍を祈ってやみません。

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