保立道久著『日本史学』のこと 

もう一つ、急ぎ紹介したいニュースを。長い留守の間に献本していただいた本が届いていました。このブログでも紹介した保立道久さんの『日本史学』(人文書院 2015年9月30日刊)です。「ブックガイドシリーズ 基本の30冊」のなかの1点ですが、著者はその30冊のなかに畏れ多くもわたしの『平塚らいてう―近代日本のデモクラシーとジェンダー』(吉川弘文館 2002年刊)を加えてくださったのです。

保立さんの本

保立さんの本

30冊のなかには著者の専門である前近代史だけでなく、遠山茂樹さんの『明治維新』、武田清子さんの『天皇観の相克』、先ごろ亡くなられた中村政則さんの『労働者と農民』など、日本近現代史の名著が並んでいます。わたしの本は10年以上前の刊行ですが、当時は「女性史」「女性運動」の視点からの批評を多くいただき、かなり手厳しい批判もありました。保立さんは、それらの批評があまり取り上げてくれなかった平塚らいてうの精神生活にとって原点ともういうべき自然・宇宙にたいする視点に注目、らいてうが20世紀に入ってから西欧でひろがった「神智学(霊知学)」に関心を持っていたのではないか、という点をとりあげてくださいました。それは霊的世界の存在を認める「反唯物論」であり、らいてうが戦時中「天皇は神」と書いたこととつながる彼女の思想の「弱点」であるかのようにみられてきたので「輝かしい女性解放運動」のさきがけであるらいてうにはふさわしくないように見られてきたのかもしれません。

わたしはらいてうをハイカラな近代主義者だとは思っていなかったので、この本でもそのことに触れ、その後1911年にらいてうが『青鞜』に発表した「高原の秋」というエッセイに出てくるのですが、「Devachan」という言葉(じつは著作集にはこれが誤植されて「Deyachan」となっていたため意味不明であった)が、霊知学では「この世を離れた霊が休息するところ」という意味の用語として使われていることを確認、それが彼女の「無限生成」という言葉に示された無限の生命観、『青鞜』から第一次大戦後の平和思想、戦後の平和運動に連なる宇宙観の出発点になった、という仮説を立てたのですが、あまり相手にされませんでした。そこを保立さんは取り上げてくださったのです。全体を読むと彼がこの本のなかで安藤礼二『場所と産霊』(これは鈴木大拙の禅の世界を通して考えた壮大な宇宙論です。わたしも読みました)や福田アジオ『柳田國男の民俗学』をとりあげている理由がわかるのではないでしょうか。とりあえず紹介しますから、関心のある方は(わたしの本のことだけではなく)どうぞ全部読んでください。

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